第19回 歯周外科治療(Part3 フラップ手術)

今回のテーマは引き続き、歯周外科治療についてお話をしたいと思います。

(こちらの記事を読む前に第17回の歯肉切除について先にお読みいただくともう少しわかりやすいと思います。)

主な歯周外科治療方法の中で、今回は

1.歯肉切除

2.歯肉剥離掻把術(FOP;Flap operation)

3.歯肉弁根尖側移動術(APF;Apically Positioned Flap)

4.骨外科(骨整形、骨切除)

5.歯周組織再生療法

太文字で書いた2のフラップ手術をご紹介をさせていただきます。

2の歯肉剥離掻把術と難しく書いてありますが、簡単に言うと「歯周病で歯周ポケットが深くなってしまった歯の歯肉をはがして、ポケット内の汚れを確実に除去した後、縫い閉じる」処置の事を言います。

歯周病治療の目的はポケット内の歯垢・歯石を確実に除去し、炎症を取り除くことになります。しかし、歯周病が進行し4mm以上の深いポケットが形成されると、ポケットの奥の歯石を取り残すリスクが高くなるため、人の歯科治療においても歯肉をはがして直接、歯の根っこに付着している歯石を除去する必要があるとされています。この様な確実な処置ができない場合、せっかく処置したのに口臭が無くならない、歯肉の炎症が治まらないなどの症状が残ってしまったりと、短期さらには長期的に管理が難しい状況になってしまいます。

症例は9歳のトイプードルで歯周病を主訴にドッグトレーナーさんからご紹介。

①処置前の写真

 

歯石の溜まっている部分と歯石の溜まり方が少ない部分の差があります。

ただ、見た目だけでは診断できないため歯科レントゲンを撮影し、診断した後、しっかり治療していきます。

今回はその中でも左上顎犬歯の歯周病が中程度に進行していましたが、残すための治療をしましたのでご紹介します。

レントゲンがこちらです。(2枚目はポケットの深さを示してます)

 

②ポケット深度の測定

 

ポケットが最大で5mmあり、レントゲンでも歯槽骨の破壊が確認されました。

4mm以上のポケットは歯肉を切開して歯根を露出し、細菌や歯石、肉芽というものを直接目で確認しながら除去することで確実な処置が可能となります。

それがこちらの写真になります。

③歯肉切開

 

④ポケット内の歯垢、歯石、肉芽の除去

 

⑤歯槽骨が破壊されてできた深いポケット内が綺麗になっています

 

⑥閉鎖縫合後(ポケットが深くなるような過剰な歯肉は切除)

 

この症例では、ポケットの深さも術後2週間後には下記の様に明らかな改善が認められました。

【5.3.2.4.5.4】→【2.2.1.1.2.1】

(6点法、単位mm)

※正常なポケット深度1mm

この様に、ポケットが深い歯周病が中程度に進行してしまった歯を残すためのフラップ外科というものは、確実な治療ができるため、予後の予測がしやすくなり、歯の寿命を延ばすことが可能となります。

実際に、上記の⑤の写真の様にポケットが深い状況になっているという事は①の処置前の写真ではわかりません。つまり、見た目では歯周病の程度を評価することはできないのです。

そして、レントゲンを撮影し、ポケットの深さを確認した上で治療を確実なものとするために歯周外科治療を選択しました。

ポケットが2mmと浅くなれば歯ブラシの毛先でポケットを意識して歯磨きをすることで、長い間きれいな状況を維持する事が可能となります。

フラップ外科は歯周外科治療の基本的な手技となります。

なるべく簡単にと思って書きましたが、難しくなってしまいました。ごめんなさい。

僕がこのブログを書いて伝えたいことは、下記になります。

・歯周病治療は抜歯だけではないという事

・歯周病の歯を残すための治療があるという事

・ちゃんとした検査と治療がその歯の予後を変えるという事

・歯を1本1本治療する事はこれだけ作業手順があり、細かい作業だという事

 

次回は、人の治療でも困難とされている歯周組織再生治療についてお話させていただきます。是非、お楽しみに!

 

『歯科専門病院だからこそできる治療。確かな医療をペットに、正しい知識を飼い主さまに!』

最後までお読みいただきありがとうございました(^^)/

東京杉並区の荻窪にあり、双子は歯科医師、荻窪ツイン動物病院

院長 町田健吾