第18回 歯周外科治療(Part2 歯肉弁根尖側移動術)

今回のテーマは前回に引き続き、歯周外科治療についてお話をしたいと思います。

(こちらの記事を読む前に第17回の歯肉切除について先にお読みいただくともう少しわかりやすいと思います。)

前回お話させていただいた主な歯周外科治療方法の中で、今回は

1.歯肉切除

2.歯肉剥離掻把術(FOP;Flap operation)

3.歯肉弁根尖側移動術(APF;Apically Positioned Flap)

4.骨外科(骨整形、骨切除)

5.歯周組織再生療法

太文字で書いた3と4を併用して治療した猫ちゃんのご紹介をさせていただきます。

3の歯肉弁根尖側移動術と難しく書いてありますが、簡単に言うと「歯周病で歯周ポケットが深くなってしまった歯の歯肉をはがして、ポケット内の汚れを確実に除去した後、ポケットが浅くなるようにはがした歯肉の縫う位置を調整する」処置の事を言います。

4の骨外科というのは、歯周炎で凸凹してしまった歯槽骨(歯を支えているあごの骨)を平坦に整える事で歯周病になりにくい状態を作ることを言います。

通常、3の処置の時には4の処置が一緒に行われることが多いです。そして、これらの処置の利点というのは何よりも直接歯の根っこの表面についている歯垢や歯石を目で見て確実に除去して、再度歯周病になりにくい歯周組織の形態を作ることができるという事です。

症例を紹介します

9歳の雑種猫、歯周病治療を目的に獣医さんからの紹介来院です。

 

 

写真を見ると部分的に歯周病が進行しており、歯科用レントゲンを撮影すると抜歯しなければいけないくらい歯周病が重度に進行している歯も認められます。

その中で、左上顎犬歯は歯肉の腫れが重度に認められるものの、歯科用レントゲンでは歯槽骨の腫れと不整が認められ、ポケットが4mm(正常1mm)と深い状況があったことから、通常の処置では腫れが治まらない、すぐに炎症が再発してしまう可能性が高いと判断し、歯周外科手術を行いました。

 

 

 

処置の写真

(スケーリング後)

(歯肉切開後)

(骨整形、歯肉縫合後)

(骨整形後の歯科用レントゲン像)

(処置から2週間後)

 

手術の細かい説明に関しては難しいため省略させていただきますが、処置を要約すると。

・猫ちゃんの上顎犬歯に比較的よく起こる病態で炎症性骨腫大と言われる状況です。重度に進行してしまうと抜歯しか治療方法はなくなってしまいますが、幸いまだ歯周外科で温存する事が可能な状況でした。

・歯周ポケットが深く、盲目的には奥のほうの歯石を取り残してしまう可能性が高いため歯肉を切開して歯垢、歯石の除去を行った。

・骨の形状が不整だったため、骨整形をしないとポケットの減少は望めない状況だった。

・処置から2週間後の写真では骨や歯肉の腫れもなくなりなだらかに歯に付着するピンク色の健康的な歯肉が認められている。ポケットも減少し治療後の経過としても良好でした。

・処置後は他の歯と同様に歯磨きで十分に長期的管理が可能な状態に改善された。

 

この様に、治療後の状況を予測しながら、どの様な治療が適切なのかを考えながら1本1本治療を行います。

次回は2の歯肉剥離掻把術(フラップ手術)について説明させていただきます。

 

 

『歯科専門病院だからこそできる治療。確かな医療をペットに、正しい知識を飼い主さまに!』

最後までお読みいただきありがとうございました(^^)/

東京杉並区の荻窪にあり、双子は歯科医師、荻窪ツイン動物病院

院長 町田健吾