第17回 歯周外科治療(Part1 歯肉切除術)

 今回のテーマは歯周外科という事で少し難しい内容になりますが、愛犬や愛猫ちゃんの歯周病治療について考えるときにヒントになる事もあるかと思います。なるべくわかりやすく説明していきたいと思いますので、ご興味のある方はお付き合いください。

 

まずは、下の写真をご覧ください。(9歳、キャバリア)

写真を見て歯周病だとわかる方は沢山いらっしゃると思います。

そして、その治療方法が「歯石除去」「抜歯」だけだと思っている方も多いのではないでしょうか?

実はそれだけではなく、残した歯が健康な状態をより長い間維持できるようにする治療があります。

それを「歯周外科治療」と言い、目に見えない歯根の歯垢や歯石を除去し、歯肉や歯槽骨の形態を整えて歯周病になりにくい状態にする治療の事を指します。

処置する人は下記に挙げる主な歯周外科治療のどれが一番最適か考えながら治療にあたるため、専門的な知識と手技が要求されることになります。

1.歯肉切除

2.歯肉剥離掻把術(FOP;Flap operation)

3.歯肉弁根尖側移動術(APF;Apically Positioned Flap)

4.骨外科(骨整形、骨切除)

5.歯周組織再生療法

などが挙げられます。

今回はその中の歯肉切除という治療方法を例に挙げて紹介させていただきます。

歯肉切除とはその名前の通り歯茎を切る処置の事で、歯周炎になって形成された深いポケットを除去する目的で行われます。

歯周外科治療の中でも最も簡単で基本的な治療となります。

症例を紹介します

7歳のトイプードル、他院で歯茎の腫れを指摘されたため当院に来院されました。

 

写真を見ると全体的に歯石が重度に蓄積し、慢性的な炎症から複数歯における歯肉が腫れている状況が認められます。

この状況で歯科用レントゲンを撮影すると多くの歯で歯周病が重度に進行していることがわかります。[写真1]

歯周病が重度に進行している歯では抜歯が適応になりますが、上顎犬歯も他の歯と同様に歯槽骨が全体的に下がっており歯周病が進んでいますが、残すことは可能な状況でした。しかし、ポケットの深さが5mmもあり通常の歯石除去ではポケット内の歯石を取り残す恐れが高く、治療後にも深いポケットが残ることで炎症を起こしやすい状況になっている状況なためただ残すだけでなく、歯周外科治療をする必要があります。(正常なポケットは1㎜程度)[写真2]

 

写真1

 

 

写真2

 

この場合、正常な歯肉は十分にあり、異常に腫れた歯肉だけを切除する事で、ポケット内の歯石を確実に除去でき、術後のポケットが減少する事によって歯周病になりにくい状況にすることができます。

歯肉切除が適応となる典型的な状況です。

 

 

そして2週間後の写真がこちらです。

 

 

2週間後の写真から歯肉の炎症は治まり歯肉はなだらかに歯面に付着するような健康的な状況である事がわかります。

この様に、治療後の状況を予測しながら、どの様な治療が適切なのかを考えながら1本1本治療を行います。

次回は3の歯肉弁根尖側移動術(APF)について説明させていただきます。

 

 

『歯科専門病院だからこそできる治療。確かな医療をペットに、正しい知識を飼い主さまに!』

最後までお読みいただきありがとうございました(^^)/

東京杉並区の荻窪にあり、双子は歯科医師、荻窪ツイン動物病院

院長 町田健吾