皆さんはシーズー、ボクサー、フレンチブルドッグ、パグなどの短頭種が受け口だった場合、異常だと思いますか?
※ 受け口 = 下の前歯が上の前歯より前に出ている状態の事
通常は下の写真の様に上の前歯が下の前歯に少し覆いかぶさるようになっているのが正常です。
そして、短頭種では下の写真の様に受け口になっているのが遺伝的に正常とされています。
ただ、この状況で問題が全く起きないわけではありません。
今回、ご紹介するのは12歳のシー・ズーで、下の前歯がぐらつくということを主訴に来院されました。
一見、歯周病もなく綺麗に見えますが、よく観察してみると、上の前歯が下の前歯の付け根に当たって、歯ぐきが白くなっているのが認められました。
そこで、今度は治療を兼ねて全身麻酔をかけ歯科レントゲンを撮影したところ、下記の様なレントゲン結果が得られました。
ちなみに、正常な犬の前歯のレントゲンはこちらです
歯の根っこの途中で4ヵ所折れているのがわかりますか?
この状況を“歯根破折(シコンハセツ)”といいます。
今回のケースでは、咬む時に上の歯が下の歯の付け根に慢性的に当たっていたことで折れた可能性が高いと考えられます。
人ではまるっきり健康な歯が突然歯根破折になることは滅多になく、神経の治療をしたりして弱くなった歯が折れることが多い病気です。そして、歯根破折に気づかないことも多く、物を噛んだ時に違和感があったり、痛みが出たり、腫れたりしてから気付くことが多いようです。
今回の様に対合歯が当たっている場合、人では歯科医院に行きますが、犬では違和感を訴えることができませんので、獣医さんがしっかりと噛み合わせを確認する必要があります。
飼い主様と相談した結果、抜歯を行う事になりました。
実際に抜歯した歯がこちらになります。
上)折れた4本の歯が軟組織で結合していたためまとめて除去
下)折れた歯の歯根部分
治療後の写真になります。
治療後は、生活に支障を認めずに生活できています。
上記のケースは歯の生え変わりが完了する頃(約7か月齢)に、上あごの前歯の歯冠を短かくするなどの治療をすれば防げたと考えられます。
去勢手術、避妊手術の際には歯の生え替わりだけでなく噛み合わせもしっかり確認することが重要であると考えられます。
『歯科専門病院だからこそできる治療。確かな医療をペットに、正しい知識を飼い主さまに!』
最後までお読みいただきありがとうございました(^^)/
東京杉並区の荻窪にあり、双子は歯科医師、荻窪ツイン動物病院
院長 町田健吾