第15回 猫の口腔内腫瘍(口の中のできもの、しゅよう)

今回は犬に引き続き猫ちゃんの口腔内腫瘍についてお話しさせていただきます。

猫ちゃんでも腫瘍発生部位としては4番目に多い部位であり、全腫瘍の3%を占めます。

犬と異なるのは、猫ちゃんで口の中に“できもの”ができた場合、その7〜8割が扁平上皮癌と言われる悪性腫瘍だという事です。

扁平上皮癌は浸潤性が極めて高く、予後が悪い腫瘍になります。

治療は、局所の外科手術がもっとも重要となります。

口腔内扁平上皮癌に対する様々な治療を併用しても、1年生存率は10%以下であり、生存期間中央値は3ヵ月もしくはそれ以下であったと報告されています。(歯肉、口蓋、咽頭、舌を全て含む)

これは他の腫瘍にも犬にも言えることですが、口腔内腫瘍はできた部位と腫瘍の大きさがとても重要で、喉の奥にできた腫瘍より顎の先端にできた腫瘍の方が切除しやすいため予後が良く、上顎よりも下顎にできた腫瘍の方が予後が良いという事になります。また、腫瘍が小さいうちなら完全に取り切る事、つまり完治も望めます。

今回、典型的な扁平上皮癌の症例と発生頻度の少ないメラノーマ(悪性黒色腫)の症例をご紹介させていただきます。

 

①MIX 14歳  扁平上皮癌

主訴)健康診断の時に左上あごの歯ぐきの腫れを指摘され当院に紹介来院

 

 

 

 

 

 

 

 

診断)全身麻酔をかけて歯科用レントゲン撮影と組織を一部切除し病理検査に提出した。さらに、病変がどこまで進展しているかを確認するためにCT撮影を行う事となった。

検査結果)レントゲン検査では写真に見えている様に左上あごの犬歯周囲の骨が広範囲に渡って破壊されていた。組織検査では扁平上皮癌と診断された。

CT検査結果)腫瘍は左上あごの骨をかなり広範囲に破壊し、鼻の中に充満し、左目を圧迫し、嗅球(キュウキュウ)と呼ばれる脳の領域に浸潤が認められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療方針)CTの結果から腫瘍の進行がかなり進んでいる事が判明したため、手術ができませんでした。この子は免疫を上げるサプリメントの内服を行い、食欲が落ちている時など痛みを感じている様子があった場合には消炎鎮痛剤を内服させる事になりました。

 

 

 

②メインクーン 15歳 口腔内メラノーマ

主訴)首の方にしこりがあるという事で来院

 

 

診断)腫れているしこりを針で刺して細胞をみる検査(細胞診)を行ったところ黒いメラニン色素を豊富に含んだ細胞とリンパ球が多数認められた事よりメラノーマの下顎リンパ節転移と考え口腔内をよく観察したところメラノーマを疑うものが認められた。

肉眼所見)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

組織検査結果)全身麻酔をかけて組織を一部切除し、病理検査に提出したところメラノーマと診断されました。

治療)猫のメラノーマはとても予後が悪い事、既にリンパ節に転移している事を飼い主さんにお伝えした結果、サプリメントのみを与えて寿命を全うしたいという事になりました。

 

上記の猫ちゃん達は診察より2ヶ月ほどで寿命を全うしました。

この様に、来院時には手術もできないくらい状況が悪いという事が少なくありません。本来であれば手術をして治りましたというご紹介をしたいのですが、このブログではあえて飼い主さんに現実を知っていただくために、紹介させていただきました。

猫ちゃんも歯磨きをしたりして毎日お口の健康に気を使っていただけたら、この様な状況を避ける事も可能だと思います。

猫ちゃんのお口にできたできものは犬に比べ悪性腫瘍が多いという事、ある程度大きくならないと症状に出にくい事などをよくご理解いただきたいと思います。

ご飯の食べ方が変だ、お水を飲む時によく水をこぼしてしまう、食べるのを躊躇している、などどんな些細なことでも構いません。異常を感じたら動物病院で診察を受ける様にしましょう。

当院では、月2回

アメリカ獣医歯科学会認定専門医、歯学博士である奥田綾子獣医師の診察を行なっております。

奥田先生は全国で顎顔面の難手術を請け負っている口腔外科のスペシャリストです。

口腔内腫瘍の手術は腫瘍の専門が行うのではなく、口腔外科の専門医が行う事で、低侵襲で機能的かつ審美的な術後の回復が期待できます。

腫瘍の種類、できている場所や大きさ、年齢はその子によって様々です。それを確実に診断して、その子それぞれに合った治療を探すのは本当に難しく、豊富な知識と手術経験がないとできません。

もし、口の中に何かを発見した、他院で匙を投げられてしまった、そんな時は是非当院にご相談ください。一緒に最適な治療方法を探しましょう。

諦めずにご相談ください。

『歯科専門病院だからこそできる治療。確かな医療をペットに、正しい知識を飼い主さまに!』

最後までお読みいただきありがとうございました(^^)/

東京杉並区の荻窪にあり、双子は歯科医師、荻窪ツイン動物病院

院長 町田健吾