治療症例の紹介

歯科治療(歯内療法)

患者さんは、8才のトイプードル、予防接種で来院したところ上の前歯が折れていました。

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症状

飼い主様は明らかな症状が認められなかったため、歯が折れたことに気づいておらず、原因がわかりませんでしたが、「何かにぶつかった」「硬いものをくわえた」事が原因で歯が折れたものと推測されます。

神経・血管が含まれている歯髄が露出(露髄)していました。 ※赤い矢印

治療プラン

お口の中には沢山の細菌が存在するのでこのままにしておくと、歯髄の細菌感染、最終的には歯の根っこに膿の塊を作り顔が腫れてしまいます。

治療方法は、抜歯か歯内治療(神経を抜き無機物で満たし塞ぐ方法)のどちらかが適応となります。

他の歯も綺麗で「歯を抜く」事に抵抗があったため、飼い主様は「歯を残す」治療を選択されました。

治療中

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治療後

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今後の対応

今回、溜まっていた歯石の除去を行い、折れた歯はキレイに残すことができました。

今後は歯が折れるような原因は取り除き、きれいで健康な歯を維持するために日頃のオーラルケアに努めていただくように指示しました。

今回のように、歯磨きをするなど定期的なお口のチェックが行われないと、気づいた頃には歯の神経が感染し、顔が腫れてしまう可能性もあります。また、お口の中には悪性腫瘍など命に関わる病気もありますので、定期的にお口を覗いて健康チェックすることが重要と思います。

歯周病治療(歯周再生療法)

治療例1

症状

患者さんは、4才のトイプードル。口臭が気になるということで来院されました。

歯周病も全体的に進んでいたため、全身麻酔下での検査、処置となりました。

右上あごの犬歯において、歯周ポケットが4mmと深かったため、歯科レントゲン検査を行いました。

ポケット深度

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歯科レントゲン検査

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歯周ポケットのトレース

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治療プラン

通常、小型犬ではポケットの深さは1mm程度とされていますので、4mmはある程度深いポケットと判断されます。

今後長期的に考えると歯石を確実に除去して歯槽骨の再生療法を行うことが最適と考えられました。

歯肉を切開して、歯石を綺麗に除去した後、歯槽骨が破壊されてしまった所に人工骨を補填(ほてん)します。

処置中写真

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歯科レントゲン検査

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今後の対応

今回、歯槽骨の再生療法に使用したのはβ-TCPといわれる人工骨です。

この材料は吸収が早く、骨に置換される特徴があります。

ただし、ポケットが縮小したか歯槽骨の再生が認められたかなど、治療結果が出るまでは約4ヵ月程度かかります。

処置後、食事指導やオーラルケアの指導をさせていただきました。

歯周病の初期であれば、抜歯ではなく、歯を残す治療も可能です。

歯周病は「骨の病気」とも言われています。

歯周病治療は歯科用のレントゲンでしっかりと診断して治療する事が適切と考えられます。

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治療例2(他院にて無麻酔で歯石除去を行った症例)

症状

患者さんは、8才のミニチュアダックス。口臭が気になるということで来院されました。

約1年前に無麻酔で歯石除去を行った後も熱心に歯磨きをされていました。

見た目はとても綺麗に見えましたが、歯の裏側には沢山の歯石が溜まっていることから、口臭の原因が歯周病に伴うものと判断し全身麻酔をかけて治療を行うことになりました。

外側はとても綺麗に見えます

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ただ、裏側は・・・

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歯の外側と裏側の違いがよくわかると思います。

口内環境が悪いため、普段は見えにくい奥の方には口内炎も認められました。その他にも上あごの粘膜は少しただれて炎症を起こしているようにも見えます。

また、更に歯石をとってみると・・・

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歯周病が重度に進んでいる歯も見つかりました。肉眼的に深いポケットと、レントゲンで重度の歯槽骨の吸収が確認されました。

治療プラン

以上の結果より、重度の歯周病に罹患した歯はケアが難しいと判断し抜歯を、その他の歯はスケーリング、ルートプレーニング(歯根表面の汚れを取り除く事)、を行うこととしました。

処置後の写真

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今後の対応

歯の裏側には全体的に歯周ポケットが形成されてしまったため、今後は歯の表面だけでなく裏側もしっかり磨けるように歯磨きの仕方を指導しました。

無麻酔での歯石除去には飼い主様が思う利点ばかりではありません。それに伴うリスクや、処置の限界、ワンちゃんの精神的負担があります。

特に、人間と違いお口を開けたまま処置をさせてくれるワンちゃんはそうそういません。ですので、歯の裏側のちゃんとした歯石除去はできないのです。

見た目は綺麗になっても見えないところで歯周病が進行しますので、歯周病かなと思われたらできる限り全身麻酔をかけた処置を検討してみてください。


治療例3(軽度歯周病におけるスケーリング・ルートプレーニング(SRP))

症状

患者さんは、2才の柴犬で木の枝やおもちゃを咬んだりすると出血するということを主訴に来院されました。

歯磨きは嫌がるのでガーゼでたまに磨く程度との事でした。

肉眼的には歯肉の赤みと退縮が認められました。(歯肉のラインを黄色い破線でトレースしています)

症例

歯周病症例3

健康な犬のお口

歯周病症例3

歯石が溜まり、歯肉が炎症を起こし退縮している事から歯周病によって歯周組織の破壊が進んでいると判断しました。
おもちゃを噛んで出血するのも歯周病の症状の一つと考えられます。
全体的に歯石が蓄積した状態では歯磨きをしても歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去しない限りは破壊を止めることは難しく、飼い主様も歯磨きに手を焼いている状態でしたので、徹底したオーラルケアが困難と判断し、全身麻酔下で歯科治療を行うこととしました。

処置前写真

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処置後写真

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治療プラン

麻酔下での検査では歯周ポケットもまだ浅く平均2mmでした。(正常は1mm)
もちろん、動揺しているような歯はないため抜歯ではなく、歯のクリーニングを行うこととしました。
処置の内容としてはSRPと言われる、歯周病の基本治療が適応となります。

スケーリング(歯石除去)
歯石の除去、歯の表面や歯肉についたバイオフィルムを、スケーラーという器具で除去します。
ルートプレーニング(根面清掃)
スケーリングを行った後に、歯根表面の汚染されたセメント質や象牙質を除去し、歯根面を滑沢に仕上げます。
ポリッシング(歯面研磨)
スケーリングだけで終了すると歯の表面は微細な凹凸ができてしまいますので、そのままだと直ぐに歯垢が付いてしまいます。そのため、仕上げに高速に回転するブラシに研磨剤を付けて、歯の表面を磨きツヤを出す作業を行います。

治療後、本来の綺麗で真っ白な歯に戻りました。
ポケットの清掃もしっかり行っていますので、歯茎の腫れも落ち着き、出血もなくなります。

今後の対応

今後はオーラルケアが重要となりますが、柴犬はもともと警戒心が強く、体を触られることを嫌がる傾向があります。
特に、歯磨きをする為にはマズルというデリケートな部分を触る必要がありますので、幼犬の頃からマズルを含めた身体を触る事に慣れさせたほうがいい犬種です。

しかし、飼い主を咬んだりするワンちゃんでなければ成犬であってもトレーニング次第では歯磨きをできるようにすることは可能です。

今後は当院で歯磨き指導をしながら飼い主様にも頑張っていただきたいと思います。
全頭に言える事ですが、特に若い子のスケーリングでは歯面や歯根を傷つけないように丁寧な歯周病治療を行うことで、長期的に綺麗な歯を維持することが可能となります。

余談

歯周病症例3写真

歯磨きは歯ブラシの毛先で歯周ポケットの歯垢を落とすイメージで歯を一本ずつていねいに磨きましょう。
ワンちゃんの歯に合った大きさ、毛先の硬さ、ヘッドの大きさなどを考慮して歯ブラシを選ぶといいでしょう。